キュゥべえ「僕と契約してプログラマーになってよ！」

「まどかがPGになれば、マミよりずっと凄腕PGになれるよ」
「もちろん、どんな案件で契約するかにもよるけれど」
「まどかが産み出すかもしれない単価の大きさは、僕には測定しきれない。
これだけの資質を持つ子と出会ったのは初めてだ」

　
「プログラマには、あなたみたいな子が相応しいわ。美樹さやかでは務まらない」

「僕はプログラマになってくれって、きちんとお願いしたはずだよ？」
「実際の状況がどういうものか、説明を省略したけれど」
「訊かれなかったからさ。知らなければ知らないままで、何の不都合もないからね」

「勘違いしないで欲しいんだが、僕らは何も、プログラマに対して悪意を持っている訳じゃない」
「全ては、この会社の寿命を伸ばすためなんだ」

「むしろ僕らは、人類が家畜を扱うよりも、ずっとPGたちに対して譲歩しているよ？」

「君たちはいつもそうだね。合意事項をありのままに伝えると、決まって同じ反応をする」
「訳が分からないよ。どうしてPGはそんなに、仕様書の在処にこだわるんだい？」

「僕はPGになってくれって、きちんとお願いしたはずだよ？」
「実際の姿がどういうものか、説明を省略したけれど」

「訊かれなかったからさ。知らなければ知らないままで、何の不都合もないからね」

「君たちPGだって、いずれはキャリアアップして、僕たちの仲間入りをするだろう？」「その時になって、枯れ果てた会社を引き渡されても困るよね？」

「全てのバグを、生まれる前に消し去りたい。全ての宇宙、過去と未来の全てのバグを、この手で」
「神様でも何でもいい」
「今日までバグと戦ってきたみんなを、希望を信じたプログラマを、私は泣かせたくない。最後まで笑顔でいてほしい」
「それを邪魔する業界のルールなんて、壊してみせる、変えてみせる」

「鹿目さん。それがどんなに恐ろしい願いかわかっているの？」
「未来と過去と、全ての時間で、あなたは永遠にデバッグし続けることになるのよ」
「そうなればきっと、あなたはあなたという個体を保てなくなる」
「氏ぬなんて生易しいものじゃない。未来永劫に終わりなく、バグを滅ぼす概念として、この宇宙に固定されてしまうわ」

「その必要はないわ。貴方は、派遣PGのままでいればいい。今までどおり、これからも」

「この会社のために氏んでくれる気になったら、いつでも声をかけて。待ってるからね」

「プログラマとの契約を取り結ぶ、僕の役目はね。君たちの魂を抜き取って、社畜に変える事なのさ」

「私たちPGは消耗品なの？あなたたちのために…氏ねって言うの？」

「例えば君は、社蓄に対して引け目を感じたりするかい？」

「彼らがどういうプロセスで、作業員名簿に並ぶのか」

「ナメんなよ。この仕事はね、誰にだって務まるもんじゃない」
「毎日美味いもん食って、幸せ家族に囲まれて、そんな何不自由ない暮らしをしてる奴がさ、
　ただの気まぐれでプログラマになろうとするんなら、そんなのアタシが許さない。いの一番にぶっ潰してやるさ」

「さやかちゃん…あんなコーディングの仕方、ないよ」
「問題ないなんて嘘だよ。まともに設計もしてないもん。動けばいいなんて、そんなのダメだよ」
「あんなやり方でコーディングしてたら、動いたとしても、さやかちゃんのためにならないよ」

「ソースをキレイにしておくのって、そんなにも大切な事なの？」

「言い訳とかさせちゃダメっしょ稼いできた分は全額きっちり貢がせないと。
　プログラマって馬鹿だからさ。ちょっと金持たせとくとすっぐ下らねぇことに使っちまうからねぇ」

「いや～ほんとプログラマは人間扱いしちゃダメっすね
犬かなんかだと思って躾けないとね。アイツもそれで喜んでる訳だし
指潰すぞって言えば、まず大抵は黙りますもんね」

「けっ、ちょっと油断するとすぐ付け上がって籍入れたいとか言いだすからさぁ
甘やかすの禁物よ
ったくテメーみてーな三次受けが１０年後も同じ額稼げるかってーの。
身の程弁えろってーんだ。なぁ？」

「捨てる時もさぁホントウザいっすよね。
その辺ショウさん巧いから羨ましいっすよ。俺も見習わないと」

「そのPG、顧客が大事で、納期に間に合わせるために頑張ってたんでしょ？
あんたにもそれが分かってたんでしょ？なのに犬と同じなの？
ありがとうって言わないの？役に立たなきゃ捨てちゃうの？」

「あのね、さやかちゃんのこと、なんだけど…」
「あ、あの子はね、思い込みが激しくて、意地っ張りで、結構すぐ人と喧嘩しちゃったり」
「でもね、すっごくいい子なの。優しくて勇気があって、誰かのためと思ったらがんばり過ぎちゃって」

「プログラマとしては、致命的ね」
「度を越した優しさはサビ残に繋がるし、蛮勇は徹夜になる」
「そして、どんな献身にも見返りの残業代なんてない」
「それをわきまえていなければ、プログラマは務まらない。だから巴マミも命を落とした」

「美樹さやかのことは諦めて」
「一度プログラマになってしまったら、もう定時に帰れる望みなんてない」

「今のはマズかったよ、まどか」

「コンパイルも通さずに、コードレビューに出すなんて、どうかしてるよ」

「君たちＰＧが身体をコントロールできるのは、せいぜい３徹が限度だからね」

「普段は当然線表通りに進んでいるはずだから、こういう事故は滅多にあることじゃないんだけど」

「PGの代わりはいくらでもあるけど、無意味に潰されるのは困るんだよね」
「また採用する手間が勿体ないじゃないか」

「大変だよ。徹夜もするし、恋したり遊んだりしてる暇もなくなっちゃうよ」
「いいものじゃないわよ。プログラマなんて」

「体が軽い…。こんな幸せな気持ちでコーディングなんて初めて」
「もう何も怖くない」
「私、一人ぼっちじゃないもの」

「javaって何なの？javascriptとは違うの？」

しってるよ、この家の経営者なんだろ。あんたがバグを放置した理由って
わかってないのはそっちだバカ
プログラミングっていうのはね徹頭徹尾ユーザーの為にするものなんだよ
経営者のためにバグを放置したって碌な事にはならないのさ
巴マミはそんなことも教えてくれなかったのかい

「ずっとこのプロジェクトを管理しながら、あなたは何も感じなかったの？
仕様書がどんなにめちゃくちゃか、わかってあげようとしなかったの？」

それがボクたちに理解できたなら、わざわざこんな下請けに仕事を回さなくてもすんだんだけどね。

「認識の相違から生じた判断ミスを後悔する時、何故かＰＧは、営業を憎悪するんだよね」

「残業が多くなると、君たちは労基に引っかかって働けなくなってしまう」
「そうならないよう、僕は君たちの残業を隠蔽し、労基から守れる形にしてあげた」
「少しでも長く、バグと戦えるようにね」

「本当にもの凄かったね、変身したまどかは。彼女なら、最悪のプログラマになるだろうと予測していたけれど…。
まさかあのシステムを、一晩でやっつけちゃうとはね」
「今のまどかが作ったシステムなら、おそらく十日かそこいらで、完全にシステムダウンさせてしまうんじゃないかな？」
「ま、後は君たち保守部隊の問題だ。僕らのノルマは、納品して達成できたしね」

「いいえ。私の（働くべき）職場はここじゃない。繰り返す。私は何度でも転職を繰り返す」

繰り返せば…それだけ短い職歴が増える。私のやってきたこと、結局…

「やっぱりね。何となく察しはついてたけれど、君はこの会社の生え抜き社員じゃないね」
「中途採用者・暁美ほむら」
「過去の経歴を塗り替えることで、幾多のブラック企業を転々とし、君が望む待遇を求めて、一ヶ月間で退職を繰り返してきたんだね」

決してプロジェクトの運命を変えられないと確信したその瞬間に、
君達は絶望に負けて、グリフシードへと変わるだろう。

君達自身も分かってるんだ、だから選択肢なんてない。
勝ち目のあるなしにかかわらず、君達はコードを書くしかないんだよ。

話が違うわ。賞与引当金には手を出すなと言ったはずよ。

さあ、受け取るといい。それが君のボーナスだ。

「何なのよっ！？ちょっと話が違うんじゃない？」
「手取り10万？何コレ？超ムカつく」

「手取り10万を残酷と思うなら、君には本質が全く見えていない」
「彼らはプロジェクトの人柱になることを前提に、PC弄りしか能がないのに、生存競争から保護され、淘汰されることなく繁殖している」

「もうやめて…！みんな、みんな信じてたの。信じてたのに裏切られたの」
「ずっとプロジェクトのみんなを見守りながら、あなたは何も感じなかったの？
みんながどんなに辛かったか、わかってあげようとしなかったの？」

希望を持つ限り、救われないって言うの？
オエップ、ゲロゲロゲロ…ゴクゴクゴク

「お前ら。お前らは自分の人生が、貴いと思う？　家族や友達を、大切にしてる？」
「本当に？」
「そう。もしそれが本当なら、プログラマーになろうだなんて、絶対に思わないことね」
「さもなければ、全てを失うことになる」