VAIO（株）「VAIO Phoneは法人向けとして作るはずだった。格安スマホと売られるなんて思ってなかった」

■ターゲットとするのは法人だけ

　バイオが協業の相手として日本通信を選んだ大きな理由に「日本通信が法人市場に強く、我々の目指す方向が一致していた」（バイオの堀泰士氏）点がある。ライバルのパナソニック「レッツノート」が法人市場で堅調な人気を誇るのに対し、バイオのノートパソコンはコンシューマーに対しての人気は高いものの法人に対しては弱い。

　激しい価格競争になりやすいコンシューマー向けだけでは収益が上げにくいこともあり、新生バイオではノートパソコンで法人市場向けを強化している。
そして、新規参入のスマホでも同様に法人市場を狙おうとしたのだ。「スマホ市場は激戦区で後発メーカーが特徴を打ち出していくのは難しい。スペックを追えば値段も上げざるを得ない。そこで活路を見いだしたのが法人市場だった」（堀氏）

　一方、日本通信には東京の固定電話番号への着信をスマホで受けられる「03スマホ」というサービスがある。また、ユーザーの手元にある端末に対してアプリやサービスを遠隔で追加できる機能もある。こうした法人向けの機能を売り込みたい日本通信にとって、自社開発の端末が不可欠となる。そこで、バイオと協業してスマホを共同で作ることになったのだ。

「Ａｎｄｒｏｉｄはセキュリティー面が不安という声がある中、サービスやアプリを後から追加してセキュリティーを強化できるという点に注目していた。だからこそ、我々はスマホ市場へチャレンジする道を選んだ」（花里氏）

　そもそも「法人向けスマホ」に参入したかったバイオは、ＶＡＩＯフォンを一般向けの「格安スマホ」として作る気などは全くなかったようだ。法人向けというコンセプトで、できるだけシンプルにビジネスマンが持って違和感のないデザインにしたつもりだったようだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO84615460Q5A320C1000000/?df=2

　だが、そうしたバイオの考えとは裏腹に、記者会見の場で日本通信からメディアに伝えられたメッセージは「格安スマホ市場のど真ん中の商品」というものだった。

　おそらく、日本通信としては、ＶＡＩＯスマホを「法人向け」とアピールするよりも、数多くのＭＶＮＯが参入して盛り上がっている「格安スマホ」として見せた方が注目を浴びると判断したのだろう。