iPhone6発売で携帯各社、消耗戦の恐れ

米アップルは１９日、スマートフォンの新機種「ｉＰｈｏｎｅ（アイフォーン）６」と「６プラス」を発売した。

新機種を扱う国内携帯大手３社は、発売直前まで端末の下取りキャンペーンの内容を練り直すなど、顧客獲得に向けたぎりぎりの駆け引きが続いた。
ただ料金やつながりやすさはほぼ横並び。このままでは販促費がかさむ不毛な「消耗戦」に陥りかねない。


「得だからうれしいが、牛丼チェーン店みたいな低価格競争だけでいいのだろうか」。
ＫＤＤＩ（ａｕ）からＮＴＴドコモに乗り換えて「６」を買った男性会社員（３３）は、喜びながらも複雑な表情を見せた。

「６」の予約が始まったのは今月１２日。しかしＮＴＴドコモは予約開始時までに料金プランを固めることができなかった。ドコモはアイフォーンの取り扱いでソフトバンク、ＫＤＤＩに後れをとり、顧客流出が続いていた。
昨年ようやく取り扱いに参入し、流出に歯止めがかかりつつある中、顧客獲得の正念場ともなっていた。

発売を前に、３社は互いの状況をにらみつつ、何度も端末の下取り条件や端末料金の値下げなどキャンペーンの内容を見直した。ドコモとソフトバンクは発売前日までキャンペーンを修正、既に消耗戦の様相を呈していた。「行きすぎれば誰も得をしない」（ドコモ幹部）状況だった。

各社が顧客競争に躍起となるのは、アイフォーン人気が衰えないためだ。
調査会社ＩＤＣによると、４～６月期のメーカー別のスマホ国内出荷シェアはアイフォーンを誇るアップルが４３・６％でダントツ。２位のソニーに２倍以上の差をつけているほどだ。

アイフォーンを重視せねばならない状況の中、料金を中心に携帯３社の競争は激化。しかし料金やつながりやすさは３社とも実質的には変わらないのが実情だ。
ＩＴジャーナリストの神尾寿氏は「１円安くできるかよりも、ニーズに合わせて他社が追随できないサービスを生み出せるかが大事」とし、料金より独自のサービスで競争力を高めることが重要だと指摘する。
ソフトバンクは新機種発売に合わせ、子会社の米スプリントを活用し、米国での通話・通信が使い放題になるプランを始めたが、今後は差別化できる取り組みが顧客獲得のカギになりそうだ。

◇独自の決済機能搭載

米国ではアイフォーンの新機種で利用できる新決済サービス「アップルペイ」に注目が集まっている。端末を読み取り機器にかざして買い物の支払いができたり、鉄道の自動改札機で切符として使えたりする日本の「おサイフケータイ」のような機能だ。現在は米国内のみのサービスだが、将来は日本で使える可能性もある。

アイフォーンに決済機能を搭載することで、利便性を高めて顧客を囲い込むのが狙い。
おサイフケータイは日本では一般的だが、欧米では普及していない。
日本で人気のアップルも世界シェアは１１．７％。アップルペイとアイフォーンの相乗効果で利用者拡大を図りたい意向とみられる。

国内３社のおサイフケータイはソニーが開発した「フェリカ」という仕組みを採用しており、アップルペイと異なる。将来、決済サービスをめぐる覇権争いが起こる可能性もある。

【キーワード】携帯決済サービス

携帯電話やスマートフォンを読み取り専用の端末にかざすだけで決済できる仕組み。日本では「おサイフケータイ」と呼ばれる。
ソニーが開発した技術「フェリカ」を採用し、ＮＴＴドコモが２００４年から対応携帯電話を発売している。電子マネーやクレジットカード、交通系ＩＣカードなどを携帯電話１台にまとめられる利便性から普及が進み、ＫＤＤＩ（ａｕ）やソフトバンクの端末にも搭載された。
ソニーによると、携帯電話などに搭載されたフェリカのＩＣチップ数は計２億４５００万個（６月末時点）。
国内ではアイフォーンを除くほぼ全てのスマホが対応している。
米国ではスマホに専用アプリを取り込み、選択した商品のバーコードをレジにかざす簡便な方式もある。

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