Apple「ジョブズ流」から決別　製品戦略でも方針転換？

　米アップルは人気のスマートフォン（多機能携帯電話）「iPhone（アイフォーン）」の低価格モデルを投入する。苦戦している中国など新興国市場での販売拡大を重視し、これまで距離を置いてきた価格競争に参戦する。カリスマ経営者のスティーブ・ジョブズ氏亡き後、配当政策などで経営方針の転換が目立つが、製品戦略でも変化の兆しが出ている。

　◇「ジョブズ流」から決別

　「『アイフォーン5』はアイフォーンの中で最も成功しており、関連ビジネスを一変させた」。 ティム・クック最高経営責任者（CEO）は10日の新型アイフォーン発表会で、トップ就任以来の成果に胸を張った。
　しかし、単に本体色の多様化が目立った今回の発表については「アップルらしいイノベーションを感じなかった」（アナリスト）と失望する声も聞かれ、同日の米市場でアップル株は下落した。ジョブズ氏は一貫して無配を続け、利益を研究開発に回し、革新的な商品を世に送り続けた。クックCEOは昨年、無配方針を転換。また、配当など株主還元策を強化するため、今年4月には巨額の社債を発行し、ジョブズ氏が数々のヒット商品により確立した「無借金経営」から決別した。
　エレクトロニクス業界全体が激しい価格競争を繰り広げる中でも、アップルは斬新なデザインや機能を持った革新的な商品を投入することで、価格競争と距離を置いてきた。しかし、今回は中国メーカーなどとの価格競争に巻き込まれ、低価格アイフォーンの投入に追い込まれた。

◇堅実路線が鮮明に

　アップルは今年に入り2四半期連続で大幅減益を計上し、高成長路線に陰りが出ている。今回の低価格アイフォーンは「機能はかなり高く、たたき売りに近い」（業界関係者）とも言われ、昨年11月に発売した割安のタブレット端末「iPad　mini（アイパッドミニ）」と同様、利益率の悪化を招きそうだ。IT各社は次の市場として「ウェアラブル（身体装着型）端末」に注目する。韓国サムスン電子は、腕時計型の多機能携帯端末を今月発売。米グーグルもメガネ型の携帯端末を既に開発者向けに公開し、来年の一般販売を目指す。アップルも腕時計型端末「iWatch（アイウオッチ）」の開発を進めているが、クックCEOは「普及に向けた課題は多い」と早期参入には慎重な姿勢も見せる。
　一方で、アップルは携帯端末市場でのシェア拡大を目指し、スマホやタブレット型端末の画面サイズの多様化を検討。普及のスピードが不透明なウェアラブル端末市場への参入は急がず、既存の端末市場で利用者を少しでも増やし、コンテンツ収入を確保しようとする堅実路線が鮮明となっている。
　（シリコンバレー時事）

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