いま、自動車用OSが熱い！　アップルが本格参入、iCarの布石か　GMや現代自の車にiOS7搭載決定

車内ＯＳ、アップル参戦　ＣＥＯ「最も重要なビジネス領域」

自動車内でのインターネット利用の普及に伴い、ハイテク企業各社は自社のネットワークシステムをより多くのモデルに搭載するため、大手自動車メーカーへの売り込みにしのぎを削っている。かねて車内ネットワーク市場への展開を視野に入れていた米アップルもここへ来て本格参入。従来品を上回る快適な操作環境をアピールし、激しさを増す「ダッシュボード上の戦い」で主導権を奪いたい考えだ。

◆「ｉＣａｒ」創造の夢

アップルの共同創業者で２０１１年に死去したスティーブ・ジョブズ氏は生前、自動車のデザインに大きな関心を寄せていた。アップルの取締役を務めるミッキー・ドレクスラー氏が１２年５月に明かしたところによれば、生前のジョブズ氏は、自動車を自らデザインしてみたいと望みながら実現できなかったことを悔やんでいたという。

衣料小売りチェーンを展開する米Ｊクルー・グループの最高経営責任者（ＣＥＯ）でもあるドレクスラー氏は「既存モデルのデザインのひどさはもはや悲劇だ。アップルで手がけた『ｉＣａｒ（アイカー）』を世に出すことがスティーブの夢だった」と振り返った。

アイカーの登場はまだ先の話になりそうだが、同社製スマートフォン（高機能携帯電話）「ｉＰｈｏｎｅ（アイフォーン）」の機能を搭載した自動車なら、年末までに新たな選択肢が増える見通しだ。アップルは６月、ホンダ、日産自動車、米ゼネラル・モーターズ（ＧＭ）、韓国の現代自動車の車に、携帯端末用の同社製次期基本ソフト（ＯＳ）「ｉＯＳ７」が搭載されると発表した。

これらのモデルのダッシュボードに備え付けられたスクリーンには、アップルの端末でなじみのある各種のアイコンがそのまま浮かび上がることになる。ドライバーはカーナビの利用や電子メールのやりとりに加え、新たな音楽配信サービス「ｉＴｕｎｅｓ　Ｒａｄｉｏ（アイチューンズ・ラジオ）」を経由した音楽試聴も楽しめる。操作は音声ガイド機能の「Ｓｉｒｉ（シリ）」を通じて行うため、運転中も前方から視線を外す必要がない。

http://www.sankeibiz.jp/business/news/130810/bsk1308100901000-n1.htm

つづく

アップルのクックＣＥＯは先月２３日の電話会議で、自動車向けＯＳについて「これこそ人々が望む製品だ。独自の手法を駆使することで、競合するどの企業をも上回れるだろう。アップルにとって最も重要なビジネス領域といえる」と語った。

◆音声認識など課題

情報や通信、エンターテインメントといったサービスをドライバーに提供する自動車向けＯＳの市場には、既にさまざまなハイテク企業が進出している。調査会社のＩＨＳアイサプライによれば、現在シェア争いで優位に立つのは米マイクロソフトと、カナダのブラックベリー傘下のＱＮＸソフトウエアシステムズ。

また車内への音楽ストリーミングサービスでは、月間７０００万人超の利用者を抱える米インターネットラジオ局のパンドラ・メディアがトップだ。同社の試算によれば、年内に米国内で販売される新車のうちパンドラのシステムを搭載するモデルは全体の３分の１に上るという。

デスクトップパソコンやスマートフォンなどで次々にヒット商品を生み出してきたアップルだが、自動車向けＯＳでライバル企業の牙城を崩すのは簡単ではなさそうだ。同社の開発した音声ガイド機能のシリは、ＧＭ傘下のブランド、シボレーの小型車「スパーク」と「ソニック」にすでに搭載されているものの評判は芳しくない。

米調査会社のエドマンズ・ドット・コムで消費者向けの助言を担当するロン・モントーヤ氏は、スパーク搭載のシリをテストした印象について「あまり満足できるものではない。車内の雑音のせいか自分の声が認識されないことがたびたびあった」と指摘する。

アップルの自動車向けＯＳが抱える課題は音声認識機能の改善にとどまらない。車内の高温に対する耐久性や、十分な製品寿命を確保するといった品質面の取り組みも求められている。

米自動車業界コンサルティング会社、カー・ラブのエリック・ノーブル社長は「外部のＯＳを自動車の車内のような特殊な環境へうまく落とし込むのは、これ以上ないほど難しい作業だ。ハイテク企業は往々にしてこの点を見過ごしてしまう」と指摘した。（ブルームバーグ　Ａｌａｎ　Ｏｈｎｓｍａｎ、Ａｎｄｙ　Ｆｉｘｍｅｒ）

おわり

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米アップルが次期ＯＳなどの技術情報を開発者向けに公表するイベント「世界開発者会議（ＷＷＤＣ）」で、自動車に搭載される次期ＯＳ「ｉＯＳ７」について説明するエディー・キュー上級副社長＝６月１０日、米カリフォルニア州サンフランシスコ（ブルームバーグ）